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春の便り
大切なる仕事仲間の皆さん、そして世界中の友へ
ソロメオ 2020年3月17日
燕は誰がよこすのだろう? 3月の初旬、仕事で家をあけているときはいつも家に電話をしてソロメオに燕が戻ってきたかを聞く。それには二つの理由がある。一つは子供のころから燕が好きだったこと、もう一つは燕が戻ってこなくなった地域もあると耳にしたことがあるからだ。燕がその場所に合わなくなってしまったからだろうか、心配だ。
今年もまた燕の到来を心待ちにする時期が来た。燕が戻ってきてくれること、それは誇らしいことだ。3月の半ばになると燕の楽し気な鳴き声と共に彼らの調和のある飛翔が楽しめる。事実、燕たちは突然、昨日飛来した。古城のオフィスの中で、一人で朝の思いにふけっていると、虫を懸命に追う燕の姿がみえた。彼らは同時に、天地至上の贈物を歓待する場所、つまり屋根のひさしの下を往来する。毎年燕を目にするたびに幸せな気分になるが、例年より気持ちがうかないこの時期、燕に再生の象徴を見る思いがした。
数日前、我々はみな航海者なのではないだろうかと思った。このイメージが気に入っている。なぜならダンテは、人間は人生を渡る航海者だと見なしているからだ。この時期、船乗りとしての人間の性をより強く感じる。オデュッセウスは嵐の時に自らの体をシャフトに括り付け、コロンブスは母なる大地の預言的メッセージである鳥の出現を待って水平線に目を凝らした。
優秀な航海士は、船は軽ければ軽いほど操縦しやすいことを心得ている。今、我々の健康に責任をもつ人の指示に従い、幸せな生活の為には不可欠だと思っていたいくつもの小さな習慣を軽減させている。家族の中でお互いより身軽になり、驚くべきことに結局のところ、ひと昔前の調和ある生活があることに気づく。誰もがつらいことの中にも喜びがあることに目を向けることができればと思う。
今日の苦悩の中にも我々をより精進させる道徳的反応といった良い面がある。そして明日、今の苦悩が記憶と共に朽ち果てる時、この時期を思い返し「天災にも魂はある。賢明な人生の師になり得るのだ」というアリストテレスの言を心に刻みたい。
愛すべき航海士の友よ、私といっしょに、皆の独創的気質でもって、素晴らしい大事業の誕生を見、日々活気を与え続けてきた。一直線に伸びる美しい畝を父が嬉しそうに眺めるのを見ながら少年時代の私が鋤の柄をまっすぐ維持したように、皆にも各人の帆船の舵を取ってほしい。
現在の危機に責任をもつ素晴らしき科学者、政府、医療機関が規定する措置を尊重し、辛抱強くしっかりと守ってほしい。事態を認識するも心配しすぎることのないように。皆の中にこれまでの生活が戻ってくるという確信を持ち続けて欲しい。