ネット時代の人文主義的職人

インターネットは人間が人間のために発明した恵みともいえる革命的手段ですが、人類が自分自身へもたらした賜物という意味ではこれが最初の例ではありません。 栄華に満ちたルネサンス期がその好例です。過去数世紀の間に、次々と新しい発明がなされ、革新のスピードはどんどん速くなってきました。写真、ラジオ、映画、電気、機械化、内燃エンジン、自動車、飛行機。世界をネットワークとしてとらえるインターネットは、この進化の先端にあると考えられます。

新しい技術のおかげで、知識豊かな伝統や人間関係のつながりや思想の伝達などが輝きを取り戻し、情熱に満ちた倫理的・社会的な深い価値が改めて認識されるようになりました。

Brunello Cucinelli 1996 - we need a new humanism

1996年 ‐ 新しい人文主義が必要だ

Brunello Cucinelli 2017 - Humanist Artisans of the Web

2017年 ‐ ネット時代の人文主義的職人

イノベーションとともに批判的な考え方や省察も展開していけば、知識の質、ひいては生活の質は向上していくでしょう。ガリレオが地動説を発見できたのは、優れたレンズを発明して望遠鏡を作ったという光学的な発見だけでなく、難しい実験と注意深い科学的熟考を行い、人々が宇宙における人間の位置づけを受け入れ、その新たな意味を見出したからなのです。

哲学者のバールーフ・デ・スピノザは、オランダの工房で学術を探求し、薄型レンズの設計と制作に取り組みました。時代の変化により逆境に立つことになった彼。その境遇下に当時の文化の分岐点の真っただ中を生きました。彼の思想は、丹精込めた職人仕事同様の綿密さをもち、兄弟愛に満ちた全人類を包み込むものであり、人間と人間、社会、宗教とのつながりをも含むものでした。

人間が成長し、物事を理解し、創造するには、これからも時間を必要とするでしょう。だからこそ、熟考を大切にしながら作られたレンズで世界とその進化を見守っていかなければならないのです。

さまざまな分野が交わり合って有意義な関係を築いていた時代、職人が人文主義の主役を演じ哲学倫理が数学や物理や化学に関わっていた時代と変わらず、今日のデジタル時代も創造力に満ちています。

極めて短期間に、素晴らしいデジタルアーキテクチャや新しい研究の可能性、新しい意見交換や討論の場が誕生しました。ウェブサイト(いわばデジタルな交差点)はいずれも、バーチャルなものですが、ひとつの「場所」であることに変わりはなく、そこに生息するエネルギーから活力を受けたゲニウス・ロキ(土地の守護精霊)により息づいていることにも変わりはありません。私たちはそのエネルギーなのです。私たちの課題は、近年のこの革命から得た果実をできるだけバランス良くポジティブに人間らしく熟させることなのです。

日常生活における時間の節約、空間を瞬時に超えられること、これらは生活クオリティーの要素です。ネット上であれ、ネットを離れた世界であれ、愛情、知識そして交流はより簡潔にそして自然に生き生きと輝くことでしょう。

我々の世代が豊かな「ネット時代の人文主義的職人」となれることを願います。過去の人文主義者がそうであったように、万人の未来を豊かなものにすべく、新しい手段を通じて思想をしっかりと芽生えさせ開花させなければいけません。

インターネットは革命的なほどの自由を基に表現や創造や知識を繰る時代のシンボルであり、それを促進する触媒です。これが人間として目指すべき理想です。ですから、感受性を常に研ぎ澄ませて地平線を見据え、成長の実りと安心感に満ち皆で共有できる将来を作り上げていかなければいけません。

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